新鮮な野菜は、美しく健やかな体づくりに欠かせない食材のひとつ。そんな野菜に深い愛情を持つベジラバーにご登場いただき、一番のお気に入り野菜について語っていただきます。初回のゲストは、おいしくて満足度の高いヴィーガンレシピを提案されている野菜料理家・庄司いずみさん。ご自身もベランダ菜園で栽培経験があるという“ミニトマト”について、たっぷりとお話をうかがいました。
美と健康にうれしい
成分は、トマトより
ミニトマトの方が豊富
わが家の食卓には、必ずと言っていいほどトマトがのぼります。それは、小さいころから大のトマト好きだった娘のため。今はもう成人していますが、物心ついたときからものすごくトマト愛が深くて、一緒にスーパーに行くと「あれがいい、これがいい」とせがまれたものです。だから、私よりも娘の方がトマトに関してはずっと詳しくて、味にもうるさいんですよ(笑)。
「毎日食べるものだから」と、私もベランダ菜園でミニトマト栽培に挑戦したことがあるんですが、そのときは虫に食べられたり、水をやり忘れたりと、なかなか手入れが追いつかなくて。やっぱり野菜を育てるのは大変! でも、水耕栽培できる「foop」を知って、これなら面倒くさがりな私でもうまく行くかもしれないな、なんて期待しています(笑)。
トマトの魅力は、なんといっても酸味と旨みの効いたその味わい。特に、もぎたてで水分をたくさん含んだものは、とっても瑞々しくて格別です。よく「どこを見ると新鮮さが判りますか?」と尋ねられますが、ヘタをチェックすると採れたてかどうかが判るんですよ。収穫から時間が経ったトマトは、水気が抜けてヘタの部分がしなびてしまいますが、採れたてはピンとはりがあるんです。「foop」のような水耕栽培だと、外気に触れず清潔だから、もいで洗わずにそのまま食べられるのも利点。まさに新鮮そのものをいただく、これ以上の贅沢はありませんね。
トマトって、調べてみると身体にはいいことづくしの食べ物なんです。特に多く含まれるというリコピンには、抗酸化作用があって、食べたそばから内臓や肌にとどまって直接力を発揮するんだとか。アンチエイジング効果が高いため、美肌を目指す女性にはうれしい限りですね。それに、お通じを促す食物繊維がとても多いため、デトックスに最適! 同じく食物繊維の多いゴボウなどは、手間がかかるし量を摂るのも大変ですが、トマトならフルーツ感覚で生のままでだって食べられますから。実はリコピンやβ-カロテン、カリウムは、大きいトマトよりミニトマトのほうがたくさん含んでいるんです。あの小さい球体のなかに、それだけの栄養がギュッと凝縮されていると思うと、単純にすごいなって思いますよね。
旨みがしっかり
あるから、トマト料理
はだし要らず!
生のままでもおいしいけれど、加熱するとトマトは一層甘みが増します。特にリコピンやβ-カロテンは、油と一緒に摂ると体への吸収率が高まるため、焼いたり炒めたりなどの調理を加えると、いいとされているんです。
なかでも私のイチオシは、簡単にできて、いろいろな料理に活用できる「さっと炒めのミニトマトソース」。湯むきしたミニトマトをオリーブオイルで軽く炒め、あとは塩や味噌を少々加えて味を調えるだけの時短メニューです。甘みと旨みが濃縮されるだけでなく、ミニトマト丸ごとを味わえるので、普通のトマトソースと比べてとっても満足感が高いんです。パスタソースとしてはもちろん、野菜のグリルや、ベジタリアンではない方には魚のソテーなどにかけてもおいしいですよ。
トマトの旨み成分って、昆布と同じグルタミン酸なのだそう。だから、ミニトマトに爪楊枝で穴をいくつか開けて水に入れ軽く煮込んだら、立派な「トマトだし」になるんです。日本は“だし文化”の国だから、かつお節や昆布のだしをどんな料理にも使うように、洋食を作るときにもチキンブイヨンなどを使いたくなりますよね。でも、世界各国の調理法を見てみると、トマトを使う料理はそれだけで味に深みが出るから、だし的なものは使用しないことが多いのだとか。旨みのおかげで、塩コショウなどの調味料もほんの少しでじゅうぶん! それでもしっかり濃厚な味が楽しめるトマトの実力には、いつも驚かされるばかりです。
メイン食材として、
隠し味にと大活躍の
「世界のトマト」
その旨みを最大限に生かすなら、同じく旨み成分のグアニル酸をふくむ、きのこと組み合わせた料理はいかがでしょうか。例えば「エリンギとミニトマトのソテー」や、「しいたけとミニトマトの煮物」は、二つの素材でさっとできるから、日常のおかずにピッタリです。
また、おもてなしの日の特別メニューなら、見た目が華やかでとっても可愛い「ファルシ」を。トマトの上部を切って中身をくり抜き、中に雑穀や芽ひじきなどを詰めてオーブンで焼き上げます。もっと手軽なスピード料理なら、切れ目を入れてスライスしたにんにくをはさんでオーブンで焼く「ミニトマトとにんにくのグリル」も香ばしくて絶品です。
私の料理スタジオでは、和食やイタリアン以外にも、各国の料理研究家を招いてレッスンを開いているんですが、本当にどの国の料理にも必ずと言っていいほどトマトは登場するので、トマトって世界中の人から愛されているんだなぁと実感させられますね。モロッコ料理の定番・ハリラスープやインド料理はトマトベース、トルコ料理の羊飼いのサラダはトマトやきゅうりなどをチョップドしたものだし、スペイン料理のパエリアはいわずもがな。面白いのは、スペインでは「トマトの汁は家宝」とされていること。だから、料理によって湯むきすることはあっても、ゲル状の部分は一滴も捨てないんですって。国によって調理文化もちょっとずつ違うので、毎回発見があって新鮮ですね。
水分が多いトマトを
賢く保存するには?
ベランダ菜園でも人気の高いミニトマトは、夏は一時にたくさん収穫できてしまうこともありますよね。そんなときは、冷凍保存するのが一番。さっと洗ってジッパー付き保存袋に入れ、冷凍庫に入れておけば、1~2週間は持ちます。使うときに水にくぐらせると、つるりと皮がむけるので湯むきの必要もなく、とても調理がラクになりますよ。
最近流行りの“常備菜”の材料としても、ミニトマトは万能。簡単なものなら爪楊枝でプチッと穴を開けて、丸ごとぬかの中に入れたぬか漬けを。2ステップでできるものなら、半分に切って塩昆布やザーサイ、塩麴など、塩けのある素材と和えるだけでも、4~5日楽しめます。
また、「自家製ドライトマト」もおいしいですよ。二等分して、中のゲル状の部分をかき出し、晴れた日に天日干しすれば1日で「ちょい干し」の状態に。歯触りもいいし、サラダやマリネにといろいろ活用できます。海藻とソテーしてもすごく美味! しっかりとした「ドライトマト」にしたいときは、3日間干すか、お天気に恵まれなければ110℃くらいの低温にしたオーブンで焼いて仕上げてください。出来上がった「ドライトマト」は、そのまま食べてもいいですし、オイル漬けにすれば1カ月以上持ちますよ。
それから、かなり大量にミニトマトが手に入ったなら、ぜひ一度トライしてほしいのが「手作りケチャップ」。まるで高級スーパーで売っている本格派ケチャップのような味わいで、これならトマト嫌いな子供でもおいしく食べられます。作るときに市販のケチャップを少し混ぜると、こなれた味になるので、ぜひ試してみてくださいね。
ミニトマトの
手作りケチャップ
材料 (2人分)
- ・プチトマト 1kg
- ・玉ねぎ 100g
- ・酢 30ml
- ・にんにく1かけ
- ・塩 小さじ1
- ・ローリエ 1枚
- ・市販のケチャップ 少々
How to cook!
- 1. ローリエ以外をミキサーにかける。
- 2. 鍋に1を入れローリエを加えて1時間程煮詰める。3分の1量程度になったら出来上がり。
※煮沸したびんに入れて2週間程度で使い切る。